アドバンスドOWの講習では様々な事件が起こる。まさに『魔物の住む講習』。
大学生のC君とD君は大の仲良しで、ダイビングに行くときはいつも2人一緒。そんな2人の起こした事件。
ナビゲーションの練習中は、インストラクターが常にそばにいるわけではなく、2人組み(バディと言う)になって、自分達で方向を判断しながら、一辺が15メートルほどの正方形を描き、元の場所に戻ってこなければいけない。といっても水中には『迷子防止』のロープが張ってあるので、割と安心。
3組中1組目がスタート。数分後、2組目のC君・D君チームの番になり、2人は仲良くスタート地点から、なぜか猛烈な勢いで泳ぎだして行った。若ぇなぁ。最後の組は私達。コンパスを見ながらゆっくりと泳ぎ始める。1つ角を曲がり、2つ角を曲がり、3つ曲がってまっすぐ行けば、ゴールにインストラクターが待っているはず。するとぼんやりとインストラクターの姿が見えて一安心、と思ったのもつかの間、あれ?私達より先に出たはずの、しかも猛烈な勢いで泳いでいったC君・D君チームがいない?
ゴール地点で待つこと数分。インストラクターが戻る気配のない2人を探しにいくため、私達にここで待つようにと指示を出した。
しばらくするとインストラクターに連れられて、C君・D君が無事生還。よかったよかった。
全てのスキルが終わり、ビーチに戻ったとき、インストラクターがC君・D君に「どこで迷子になっちゃったの?」と聞くと、2人は恥ずかしそうに答えた。
C君「いや・・・迷子じゃなかったんです・・・」
D君「こいつが急に浮上しろって合図出してきたんですよ!」
 |
|
どうやらナビゲーションの途中、浮上を命じられたD君は、ガンガゼというウニ(大した毒はない。刺されてもチョット痛いだけ。)に、指を刺されたらしい。そして、偶然の悪戯というのは恐ろしいもので、D君は講習前日、ダイビング代を稼ぐため、夜遅くまでアルバイトをしていたのだが、実は彼、『寝不足でダイビングすると鼻血が出る』という特異体質の持ち主。それを知らないC君が、水中でウニに刺されたとD君に指先を見せられたとき、D君の鼻から血が出ていることに気づいたものだからさぁ大変!C君にしてみれば |
「いかん。いかーん!オレの親友のDが猛毒のウニに指されて鼻血出しよった!!」ということだ。本人曰く「Dの身体に毒が回らない内に浮上しなければ!」と考え、迷子防止用のロープを尻目に水面まで浮上したものの、浮上を命じられたD君はサッパリ訳がわからず、結局ロープを見失った2人とも当然迷子というのが事の顛末らしい。
ほんの数分の出来事でしょうが、親友の生命の危機に直面したC君は、彼の人生で最大の決断を迫られ、D君は半パニックになった親友から理解できない謎の浮上命令を下されたのだから、この講習は彼らを大きく成長させたに違いありません。 |